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アトピーの権威、丹羽靭負先生の著書から、科学的にアトピーに対処するための情報を一部ご紹介します。

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アトピー性皮膚炎、今と昔

30年前、私が医師になった頃のアトピー性皮膚炎は今のアトピー性皮膚炎と全然異なっていました。
そもそもアトピー性皮膚炎・小児ぜん息・アレルギー性鼻炎の3つの病気はアトピー体質の家系に発症するといわれ、同じ患者にこの3つの病気が同時に現れたり交互に出ることはまれではありません。
昔はアレルギー性鼻炎は非常に少なく、一方、アトピー性皮膚炎とぜん息はかなりの患者数がありましたが、この2つの病気とも、杜氏の医学の教科書にも書いてあった通り、患者が小学校へ入学する頃までには必ず治り、したがって、治療も対症療法で、その時その時、急場しのぎでいればなんとかなり、私達医師にとっては非常に“卸しやすい、治しやすい”病気でした。

また、アトピー性皮膚炎は小児に限られ、しかもその症状は軽く、いわゆる四肢好発部位(両腕、肘と両下肢の膝の内側部)に乾燥し、やや肥厚した皮疹と、ひどい患者さんでも躯幹部(胴体)に鳥肌のまじったような丘疹(lihenoid papel)と乾燥した落屑を伴う紅斑が認められるくらいで、しかも小学校へ入るまでには治ってしまいますので、ステロイドの外用をやろうと何を使おうと長い期間使う恐れがなかったので、特に問題はありませんでした。
ところが、20年前頃から、そのアトピー性皮膚炎の病状が少しずつ変化し始め、ここ14,5年前から、アトピー性皮膚炎がすっかりさま変わりしてしまったのです。
大きな変化と小さな変化を箇条書きすると次のようになります。

A)四大変化(メジャー)
  <1>患者数の増加(激増)
  <2>症状の悪化(肥厚、苔癬化、結節性痒疹型)
  <3>罹患あるいは増悪年齢の高齢化
  <4>大都市、工業都市に居住する患者の増加

B)四つの小変化(マイナー)
  <5>好発部位に関係ない病変の増加
  <6>季節性の変化のない患者の増加
  <7>食事やアレルゲンに関係ない患者の増加
  <8>アトピーの体質家族歴陰性、あるいは、はっきりしない患者の増加

この8つの変化の個々の説明に関しては、後ほど、倫理の進展に伴って一つひとつ説明していきますが、まず、メジャーの四大変化のうち(1)(2)(3)ですが、私が医師になった頃は、アトピー性皮膚炎は、小学校へ行くまでに全員治癒し、症状もBの小変化にありますように腕や下肢の屈側部に限られ、ひどい患者さんで、身体(躯幹など)に、鳥肌の立った乾燥した皮疹、落屑(フケの目立つ状態)がみられる程度でした。
そして小学生のアトピー性皮膚炎患者は本当に存在しなかったのです。これは歴史的な事実です。

それが、最近は、中学、高校、大学、さらには20歳ー30歳の青壮年、娘さん達が、前述のように全身に肥厚、苔癬化し、象のような皮膚、オロシガネのようになったり、結節性痒疹といって、硬く深い皮疹が出現し、これは大学病院でもっともきつい高濃度のステロイドを湿布しても好転せず、困り果てた末に私の病院に来院される患者さんが非常に多いのです(私の病院は自由診療です。保険のきく病院で好転するようなら、わざわざお金のかかる私の所へなど来られません)。

特に結節性痒疹型は私の病院の軟膏療法(詳細は後述)を行っても相当の治療期間を要します。
普通はかなり重傷の患者さんでも1週間か、せいぜい10日くらいで退院されますが、この結節性痒疹型は1-2ヶ月要します。
特に肥厚・苔癬化、結節性痒疹型は、痒いからといって患者さんがかいても、皮疹の厚さが厚くて掻ききれるものではありません。
ですから、不眠から会社、学校を休むという最悪のパターンを招いてしまいます。

少し専門的な観察になりますが、成人型アトピー性皮膚炎が増える中でも3つの程度があり、まず一度、幼児期に軽快治癒し、中学〜大学生頃再発するタイプと、次に、幼児期よりずっと続いて徐々に悪化し、成人重傷アトピー性皮膚炎になる人と、さらに今度は、幼児期に全然かゆい皮疹のなかった人が成人近くになってから急に、重症アトピー性皮膚炎を発症するタイプとの3グループがあり、この原因は不明です。

患者数も、とにかく激増してきています。先日のニュース報道によると、大阪府もアトピー性皮膚炎の実態調査に取りかかり始めました。
また、厚生省も激増、重症化してきたアトピー性皮膚炎の実態について調査中で、未だ非公開式データですが、およそ4家族に1家族はアトピー性皮膚炎患者を抱えているそうです。
ただ、残念なことに30年前に日本全国でアトピー性皮膚炎患者が総計何人いたかという免疫的調査データがないため、いくら現在「増加した、増加した」「成人重症型が増えた」と言っても正確に科学的に比較する資料がありません。

そこで、“腰の重い”(よい意味では“慎重居士”の)大学の先生方の中には、「いや、患者が医師にかかる罹患率が増したのだ」とか、批判されるアカデミックな向きがたくさんおられます。
が、事態はそんな“のんびり”した事を言っている時ではありません。
私は、そのような先生方に対して、「貴方達はお若いが、私が医師になった30年前には、本当に小学2、3年生のアトピー性皮膚炎なんて一人もいなかったのですよ。いわんや、全身重症の気の毒な大人のアトピー性皮膚炎なんて、全然見た事も聞いた事もなかったし、もちろん、もしあれば当然学会発表になったであろうに、一人の発表もなかったのですよ。この現実を皆さんはどうお考えになりますか。今何らかの手を打たなければ、重症患者の多くが学校や会社を休み、企業から断られ、社会からまさに抹殺されようとしているのですよ」と応酬しています。

次にマイナー小変化は、いずれも昔型のアトピーの特徴が失われていることを示します。
すなわち、昔のアトピー性皮膚炎は、メジャーの大変化の所でも触れましたように、腕と下肢の屈側部に必ずといってよいほど病巣がみられ、これがアトピー性皮膚炎診断基準(アトピー性皮膚炎という診断を下すのに必要な条件)のもっとも重要なものでした。
ところが、重症化してきたため、腕、下肢だけに限らず、全身に病巣が拡大してしまい、また、こういう腕、下肢の好発部以外の場所にも出てくるようなったのです。

次に(6)の季節の変化ですが、昔のアトピーは、冬悪化してそれ以外の季節では自然に軽快したり、また、患者さんのよれば、夏悪化して冬改善されたりする、季節による変化があったのですが、最近では、環境汚染がアトピー性皮膚炎を悪化させているため、1年中悪い症状を呈し、環境汚染とそれによって発生する活性酸素、過酸化脂質が年中存在し、増産されるため、季節によって自然に軽快改善されることがなくなってしまったのです。

(7)については、昔は、患者さんの数も少なく、その中にはアトピー体質の一つとして食事で誘発される人がかなりいたのですが、最近では、個人個人に特有な体質による異常(アレルギー)だけでは済まされない、もっと多くの人々に共通した原因、すなわち、環境汚染がアトピー性皮膚炎(増加、悪化)の大きな原因となっていることを示しています。

以上のことがらを平成4年度の私の病院の418人の入院患者から統計をとってまとめ、昨年の日本皮膚科学会誌に論文にして発表した表がありますので、表1として簡単にまとめて表示しておきます。
私たち科学者・医師達は、この現状を正しく率直に直視し、無責任なステロイドの外用のみに頼るのではなく、また、同じく無責任で何ら化学根拠もない、また実際の効果も挙げられないでいる自然回帰の療法でもなく、本当に患者さんの側に立った、長期の抜本的治療解決法を追求する必要に迫られているのです。

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2007年05月21日 00:05