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2007年09月28日
精神的な要因もアトピーを悪化させる
既述のように、食事アレルギーでアトピーが悪化するのは、13歳未満の徒国幼児期に多く、13歳を越し成人に近づいてきますと、食事で悪化する患者は激減し、今度は精神的な原因でアトピー性皮膚炎が悪化することがかなりの数の患者さんでみられるようになります。
例えば、受験勉強をやり始めたり、気を使うような新しい会社に就職したり、仕事が大変忙しく、寝不足、過労にストレスが重なったりするとアトピー性皮膚炎が急速に悪化することが多々あります。
寝不足、過労、ストレスは万病のもとで、私の出版予定の著書「クスリで病気は治らない」(仮題)にも強調してありますが、大きな難病を根本的に治すには(クスリよりも)充分な睡眠と過労、ストレスを避けることが大切なので充分注意してください。
ただ、この精神的原因の解決や、温泉療法のみでアトピーが改善したとしても、それはごく限られた人数の患者さんで、大多数の重症患者さんは、いろいろな治療法を総合的に行う必要があります。
2007年09月17日
アトピー患者の皮膚は保湿機能が低下している
アトピー体質の人の大切な特徴の一つに、乾燥肌があり、これは、皮膚の一番表面にある角層という層の保湿機能が正常の人と比べて、体質的に低下しているからなのです。
詳しく説明しますと、人間の皮膚の水分を外へ蒸発して逃さないように皮膚の湿度を保ってくれるのです。
これを角層の保湿機能と呼びます。
何度も申しますように、アトピー体質の人は“Xevosis(乾皮症)”といって、この角層の保湿機能が弱く、角層の下の方の皮膚の水分が角層を通って上へ逃げ出してしまうのです。
ですから、アトピーの人は、乾燥肌をしており、アトピー性皮膚炎が悪化しますと、ますますこの乾燥肌が増悪していきます。
この角層の保湿機能を科学的に数字に表し、測定できる面白い方法を紹介します。
図5に図示して解説しましたが、この実験方法で、アトピー体質の人の角層を特殊な機械を使って薄く剥がし、角層の部分だけを取って、ガラス版・濾紙の上に乗せ、両端をテープで密着させて測定しますと、濾紙の水分がどんどん失われますが、正常な健康人の角層を持って来て、測定実験してみますと、水分はなかなか逃げ出しません。
この現象は、アトピーの皮膚炎の部分の角層を剥がそうと、皮膚炎を起こしていない正常皮膚を取って来ようと、アトピー体質の人であれば、同じ現象(保湿機能の低下)がみられます。
また過酸化脂質は、角層の保湿機能の実験で興味深い反応を示します。
正常人の角層を剥がして、ガラス版・濾紙の上に置き、両端をテープで密着した後、最上層の正常人皮膚の上に、エーテルやアルデハイド、さらに、過酸化脂質を数滴落としますと、保湿機能の強力であった正常人の角層が障害を受け、保湿機能が低下し、水分が上へ逃げていき始めるるのです(文献、英文K.HashimotoーKumasaka参照)。
以上の説明から、皮膚の構造や角層の保湿機能について充分ご理解いただけたと思いますが、過酸化脂質は、このように、正常な角層の保湿機能を破壊してこれを奪ってしまうのです。
ですから、環境汚染で続々と発生する活性酸素が、身体の脂と結合し、過酸化脂質を形成しますと、この大量にできてしまった過酸化脂質が、元来保湿機能が低く、乾燥肌のために、皮膚炎を起こしているアトピー性皮膚炎患者の角層に付着して、いっそうの保湿機能を奪い、低下させるという悪循環が生まれ、どんどんアトピー性皮膚炎を悪化させていっていると理解されるのです。
こうして昔は小学校へ行くまでには、自然治癒力で角層の保湿機能が快復いてアトピーも消失していたものが、このように環境汚染で過酸化脂質がどんどん作られ、それが患者の皮膚に付着するため、小学校へ行く頃になっても、どんどん患者の保湿機能を奪うため、学童期にアトピーが治るどころか、ますますアトピーを悪化させいくものと考えられるのです。
例えば、2歳の子供と20歳の青年では環境汚染にさらされる期間が18年違い、その分だけ20歳の青年は皮膚炎が悪化します。
したがって、小児よりも成人に重症のアトピー性皮膚炎が続出してきた事実は、環境汚染の観点から考えると、よく理解できることです。
2007年09月08日
遺伝としてのアトピーと環境問題
元来アトピー性皮膚炎、気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎等は、遺伝形式は不明ですが、遺伝的要因が強いと考えられています。
昔は患者さんの大半は、家族に、また祖父母に、アトピー体質(アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎)の人がいて、その遺伝的な因子をもらってアトピー性皮膚炎が発生していた患者さんが多かったのです。
これを“アトピー’(体質)の家族歴がある(陽性である)”というのです。
もちろん、今でもアトピー性皮膚炎は、遺伝的要因(例えば、皮膚角質の保湿機能低下による乾燥肌や食事アレルギー等)が原因になっている場合が多いのですが、最近は、患者数が激増したため、このアトピー体質の家族歴がない人、また、はっきりしない人がかなりの数でアトピー性皮膚炎患者の中の割合を占めるようになってきてしまいました。
これは、昔の、非常に軽い遺伝的要因の場合はアトピー性皮膚炎がほとんど発生せずに終わっていたような多くの人々にも、環境汚染(が作り出す活性酸素、過酸化脂質)が、皮膚の保湿機能を奪って乾燥肌の皮膚を発生させるようになってしまったのです。
そのため、最近のアトピー性皮膚炎患者の中には、昔と違って、家族歴でアトピー体質をはっきり持っている人の割合が少なくなっているという現象が生まれています。
前述のように、ひと昔前は、腕、下肢の屈側部にひどい症状があったのですが、最近では、全身型の患者が増え、かつ、季節に関係なく、1年中ひどい症状を示すようになっています。
さらに成人型の患者さんに、顔、首に特に悪化したひどい症状を持った人が多くみられるようになってきています。
これも、先述したように、環境汚染の排気ガスや重油をたく工場の煤煙が、露出した顔や首に直接あたるためと考えられています。