ステロイド剤は約30年あまり前にアメリカで開発され日本にやってきました。
たしかに、それまで思春期から年頃の娘さんが紅斑性ろうそう(SLE)や結節性動脈周囲炎(PN)などの恐ろしい膠原病にかかると、若くして必ず生命を奪われていましたが、このステロイドの出現で一命をとりとめるようになりました。
ただ、このステロイド内服剤の欠点、弊害もまた極めて大きいものであることを認識しなければなりません。
まず第一に、ステロイドを皮膚に塗ったのではなく、内服した場合について説明すると、ステロイド剤は症状を抑えているだけで、内服を中止すると元の木阿弥に戻ること。
次に、この薬は身体のすべての反応(よい反応も悪い反応も)を抑えるため、必然的に副作用が出るという点です。
例えば、身体にとって困る反応(熱、腫れ、痛み、発疹、かゆみ、喘鳴)を抑えるのはあり難いことですが、身体にとって必要な反応、筋肉の発育、骨の発育、黴菌やカビが侵入した時にこれを叩く反応なども抑えてしまいます。
その結果、長期間使用していますと骨がぼろぼろになり、筋肉がぼろぼろになり、胃潰瘍、糖尿病も発生し、さらに黴菌に対する抵抗力も低下し、抗生物質も効かなくなって肺炎や腎盂炎を起こし死亡することもあります。
(特にこの副作用は子供さんと老人に著明にみられます)。
さらに、もう一つ困った副作用は、もちろんステロイドを中止する元の症状がまさに爆発するように出るのですが、それ以上に、ステロイドをなんとか減量、中止しようとしますと麻薬の時のような禁断症状が出て、激しい頭痛、高度な目眩、耳鳴り、さらには呼吸困難を起こして死亡することさえあります。
これを医学用語でwithdrawal syndrome(withdrawalとは“内服を中止する”syndromeは“症状”という意味)と呼びます。
このような恐ろしい薬ですので、、もちろん私も西洋医学の教育を受けていますから、どうしてもという時は必要最少限の範囲で使用します。
ただ、それは、さきほどの紅斑性ろうそうや結節性動脈周囲炎のように放っておけば命を取られてしまう病気に限定しています。
ところが、最近の若いドクター達は非常に簡単に、安易にこのステロイドを使用し、命に関係のないリューマチや喘息、いえ、そればかりかさらに恐ろしい事にはアトピー性皮膚炎にまで内服を使用している医師をみかけます。
ついでに、水泳について申し上げておきます。
海水浴は禁止。
しかし、室内プールはOKです。
ただし、プールは水を腐らせないため大量のカルキが投入されていますので、(通常でも水道の水は汚染されているのでカルキの含有量が多い)、カルキによる皮膚炎の心配があります。
したがって、プールから出るときは、シャワーを普通の人の2倍も3倍もかぶってプール水をよく落としてから出してください。
先述したように、私が「海水浴は禁止」と言うと、以外そうな表情を浮かべる患者さんがいます。
たしかに、巷には「海水浴、紫外線、オゾン療法(オゾンは生体内では産生されませんが、活性酸素の一種です)がアトピー性皮膚炎によい」という説が流布され、実際にアトピー性皮膚炎の治療に用いられたりしています。
しかしこの結果、特に重症のアトピーの場合はますます悪化しているのが実情です。
ここで皆さんにぜひお考えいただきたいのは、皆さんが暮らしている「時代」と「場所」です。
フロンガスによるオゾン層の破壊などの環境汚染がなく、地球上に照射される紫外線の量が適量であった“古きよき時代”に、太陽光線が弱い高緯度の“北国”では、たしかに紫外線不足のためにアトピー性皮膚炎に黴菌がついて二次感染を起こすケースがあったでしょう。
こういう状態の患者さんには強力な殺菌力を有する活性酸素を発生する紫外線や、その紫外線を受ける海水浴、さらに活性酸素そのものであるオゾンが必要とされ、よく以前にスウェーデンやノルウェーなどの北欧の医学誌に“アトピー性皮膚炎に紫外線療法が有効”といったタイトルで研究論文が発表されていたものです。
しかし、そうした論文が書かれた「時代」と「場所」は、現在の私たちが置かれた生活環境とはまったくかけ離れたものです。
オゾン層が破壊され、紫外線が異常に強くなり、活性酸素がアトピー性皮膚炎悪化の主要原因の一つとなった今日、このような誤まった治療法は絶対にやめなければなりません。
このアトピーの最近の激増、重症化は、患者さんが医師にかかる割合(罹患率)の増加だけでは決して説明できない事態まできていることを、医師・患者さん・行政のいずれもが深刻に捉えねばならない事態になっているのです。
]]>たしかに、アトピーはや体質性のものです。
ただ、環境汚染のなかった時代にその体質だけで終わり、既述のような角質の保湿機能の低下が回復して治療していたのです。
それが、環境汚染によって過剰な活性酸素が発生し、これに対し活性酸素を取り除く体内のSODがアトピー患者は体質的に少ないために活性酸素を除去できず、これが脂と結合して過酸化脂質がどんどん作られてしまい、前述のように学童期までに回復するはずの角質の保湿機能が実際には回復するどころか、どんどん作られてくる過酸化脂質によって、角層が破壊され、保湿機能の低下がますます進行し、アトピー性皮膚炎がさらに悪化するようになってしまったのです。
そこで既存のアトピー性皮膚炎に対する考え方と、私の新しい研究による結論を併せて、アトピー体質なるものを考えてみます。
次項にa〜dと4つの条件をまとめておきましたが、アトピーの人は遺伝的に角質の保湿機能が低く乾燥肌のため、皮膚炎を起こしやすく、そこに、子供さんでは、特殊な食事に対する過敏な反応があり、皮膚炎が悪化してしまいます。
さらに、体質的にも体の中の脂が多く、かつ、環境汚染でできた活性酸素が過酸化脂質を作るための格好の条件を与えてしまいます。
そのため、過酸化脂質が増産され、過酸化脂質が皮膚炎をさらに悪化させると言うことができます。
<アトピー体質の本質>
(a)角層の保湿機能の低下(乾燥肌)
(b)(子供の何割かに存在する)食事アレルギーが皮膚炎を悪化
(c)体内の悪い脂が体質的に多い。また、必要な脂が少ない
(d)活性酸素を取り除くSODの力が弱い
アトピー性皮膚炎の特徴として、先に挙げたメジャーの変化、マイナーの変化のほとんどは、環境汚染(活性酸素、過酸化脂質)によってもたらされたものであり、人数の増加、年齢の上昇、アトピーの家族歴のない患者の増加、好発部位などで軽減することがなくなり、特に顔、首などの露出部に悪化した皮疹を持つ患者さんが多くなったなど、すべて(先述のアトピー体質に対する関与も含め)環境汚染が成せる業と言えるようです。
]]>寝不足、過労、ストレスは万病のもとで、私の出版予定の著書「クスリで病気は治らない」(仮題)にも強調してありますが、大きな難病を根本的に治すには(クスリよりも)充分な睡眠と過労、ストレスを避けることが大切なので充分注意してください。
ただ、この精神的原因の解決や、温泉療法のみでアトピーが改善したとしても、それはごく限られた人数の患者さんで、大多数の重症患者さんは、いろいろな治療法を総合的に行う必要があります。
この角層の保湿機能を科学的に数字に表し、測定できる面白い方法を紹介します。
図5に図示して解説しましたが、この実験方法で、アトピー体質の人の角層を特殊な機械を使って薄く剥がし、角層の部分だけを取って、ガラス版・濾紙の上に乗せ、両端をテープで密着させて測定しますと、濾紙の水分がどんどん失われますが、正常な健康人の角層を持って来て、測定実験してみますと、水分はなかなか逃げ出しません。
この現象は、アトピーの皮膚炎の部分の角層を剥がそうと、皮膚炎を起こしていない正常皮膚を取って来ようと、アトピー体質の人であれば、同じ現象(保湿機能の低下)がみられます。
また過酸化脂質は、角層の保湿機能の実験で興味深い反応を示します。
正常人の角層を剥がして、ガラス版・濾紙の上に置き、両端をテープで密着した後、最上層の正常人皮膚の上に、エーテルやアルデハイド、さらに、過酸化脂質を数滴落としますと、保湿機能の強力であった正常人の角層が障害を受け、保湿機能が低下し、水分が上へ逃げていき始めるるのです(文献、英文K.HashimotoーKumasaka参照)。
以上の説明から、皮膚の構造や角層の保湿機能について充分ご理解いただけたと思いますが、過酸化脂質は、このように、正常な角層の保湿機能を破壊してこれを奪ってしまうのです。
ですから、環境汚染で続々と発生する活性酸素が、身体の脂と結合し、過酸化脂質を形成しますと、この大量にできてしまった過酸化脂質が、元来保湿機能が低く、乾燥肌のために、皮膚炎を起こしているアトピー性皮膚炎患者の角層に付着して、いっそうの保湿機能を奪い、低下させるという悪循環が生まれ、どんどんアトピー性皮膚炎を悪化させていっていると理解されるのです。
こうして昔は小学校へ行くまでには、自然治癒力で角層の保湿機能が快復いてアトピーも消失していたものが、このように環境汚染で過酸化脂質がどんどん作られ、それが患者の皮膚に付着するため、小学校へ行く頃になっても、どんどん患者の保湿機能を奪うため、学童期にアトピーが治るどころか、ますますアトピーを悪化させいくものと考えられるのです。
例えば、2歳の子供と20歳の青年では環境汚染にさらされる期間が18年違い、その分だけ20歳の青年は皮膚炎が悪化します。
したがって、小児よりも成人に重症のアトピー性皮膚炎が続出してきた事実は、環境汚染の観点から考えると、よく理解できることです。
もちろん、今でもアトピー性皮膚炎は、遺伝的要因(例えば、皮膚角質の保湿機能低下による乾燥肌や食事アレルギー等)が原因になっている場合が多いのですが、最近は、患者数が激増したため、このアトピー体質の家族歴がない人、また、はっきりしない人がかなりの数でアトピー性皮膚炎患者の中の割合を占めるようになってきてしまいました。
これは、昔の、非常に軽い遺伝的要因の場合はアトピー性皮膚炎がほとんど発生せずに終わっていたような多くの人々にも、環境汚染(が作り出す活性酸素、過酸化脂質)が、皮膚の保湿機能を奪って乾燥肌の皮膚を発生させるようになってしまったのです。
そのため、最近のアトピー性皮膚炎患者の中には、昔と違って、家族歴でアトピー体質をはっきり持っている人の割合が少なくなっているという現象が生まれています。
前述のように、ひと昔前は、腕、下肢の屈側部にひどい症状があったのですが、最近では、全身型の患者が増え、かつ、季節に関係なく、1年中ひどい症状を示すようになっています。
さらに成人型の患者さんに、顔、首に特に悪化したひどい症状を持った人が多くみられるようになってきています。
これも、先述したように、環境汚染の排気ガスや重油をたく工場の煤煙が、露出した顔や首に直接あたるためと考えられています。
もう一つ、私が環境汚染説に非常な自信をもったエピソードをご紹介しておきます。
約3年前、奈良県生駒の20歳の男性(表6の第1例)で、全身が象の皮膚のような重症患者がいました。
足摺岬にほど近い私の病院に入院させて、軟膏治療を行うと改善されますが、退院後も同じ治療をしているにもかかわらず徐々に悪化していきました。
この患者さんは重症アトピー性皮膚炎を反復するため、満足に仕事にも就けず収入もありませんでした。
気の毒に思った私はこの青年に、こう提案してみました。
「なんだったら、一度私の病院に勤務してみるか。うちへ来ると良くなるし、あなたも経済的に助かるだろうし」。
この青年は、すぐ私の病院に就職して、就職後3-6ヶ月経った頃には軟膏治療もほとんど必要なくなっていました。
もう一例(表6の第2例)、名古屋の20代の娘さんでした。
これも私の病院に入院すると良くなり、退院すると首から顔面にかけて糜爛、湿潤したひどい症状を反復していました。
この娘さん、ある時名古屋に帰っていて、私と名古屋で会った時に、非常に皮膚炎が改善されていたことがあったのです。
塗っている軟膏など全然変えていません。
その娘さんにどいう変化があったのかといろいろ問診してみますと、彼女が数日前まで2週間ほど沖縄の友人の家に行っていたことを突き止めたのでした。
以上の事柄から、私は、アトピーの重症化は絶対に環境汚染が主な原因であるという確信を持ったのです。
さらに、先に挙げてきた科学的な検査結果からも、環境汚染説を口を酸っぱく唱えるようになったのです。
現在、私の病院は成長期にありまして、従業員数がどんどん増えて来ています。
その中に、なんと10名の元重症アトピー患者(入院すると改善し、退院すると徐々に悪化を反復)がいます。
表6にまとめて表示してありますように、全員が生駒の青年のように入院後3ヶ月以内にほとんど治療の必要がなくなっています。
要するに、私が最近のアトピーの特徴として列挙した4番目、すなわち、大都市、工業都市に居住する患者の増加は、活性酸素を大量に発生する環境汚染でほとんど説明がつきます。
ただ、製紙工場にかぎり活性酸素は関与せず、そこから排泄される苛性ソーダ-正体は、苛性ソーダです。また画家やペンキ職人、シンアーを扱う仕事をする人などにアトピー性皮膚炎の症状が激しい患者さんが増えてきたことからみて、これは有機溶剤が角質の保湿機能を奪うためと考えられます。
先述したように、苛性ソーダの排泄が直接皮膚を刺激、あるいは皮膚の保湿作用を奪うこともアトピーの要因として考えられます。
皆さんが列車や自動車で伊予三島、川之江を通過するときに経験される、あの鼻をつくような“ツーン”とする異常なまでの刺激臭の正体、それが苛性ソーダです。
この白内障の原因について考えると、図2のように、紫外線が眼のレンズにあたり、前述のような理由で活性酸素が発生し、眼球内の奥の網膜という所で、網膜は非常に脂(不飽和脂肪酸)の多い場所であるため、ここで過酸化脂質が生産され、その過酸化脂質が前方に送られ眼のレンズの内側に付着して(過酸化脂質は白濁した脂ですので)眼が見えにくくなる病気なのです。
一方、初めに、眼底の網膜で作られた過酸化脂質がそのままその場所で大量に作られていきますと網膜を傷つけ、剥がして網膜剥離が発生し視力障害がもたらされるのです。
ですから、白内障、網膜剥離が、重症アトピー性皮膚炎に合併して当然ですし、また逆に、この過酸化脂質によって起こる両目病変が重症のアトピー性皮膚炎にみられるという事実は、アトピー性皮膚炎の過酸化脂質原因説を裏付けることにもなります。
]]>私は、全国の病院や治療所で、抗癌剤を拒否した癌患者(特に末期)やステロイドの副作用でどうにうもならなくなった膠原病患者の診療を時々やっていて、この過酸化脂質を測定するように指示します。しかし、皆、商業ペースの請負でやっている検査センターに出して測定しているためか、過酸化脂質の測定に限って、正確な値が出たのを見たことが一度もありません。したがって、過酸化脂質の正確な値を知ろうとすれば、私の研究所をはじめ、活性酸素や過酸化脂質の研究を専門でやっているところに依頼してください(本当の値に非常に近い値がでてきます)。
]]>不飽和脂肪酸は活性酸素と結びついて過酸化脂質となり、血管、臓器、皮膚組織に付着して徐々に生体に障害を与えてしまうのですが、アトピー性皮膚炎の患者さんは、健康人と比較するると不飽和脂肪酸が多く、SOD誘導能が低いという結果が出ています。
不飽和脂肪酸は活性酸素と結びついて過酸化脂質となり、血管、臓器、皮膚組織に付着して徐々に生体に障害を与えてしまうのですが、アトピー性皮膚炎の患者さんの場合は、過酸化脂質が皮膚の最上層の角質層に付着して皮膚の水分機能を奪ってしまっているのです。
それでも、日本人が和食を好み、環境破壊が今ほど深刻化していなかった頃は「乾燥肌」にはなっても不飽和脂肪酸が増え、大気汚染に代表される環境破壊により体内で活性酸素が大量に作られるようになると、もともとSOD誘導能の低いアトピー体質の皮膚はひとたまりもありません。
こうして「現代型」アトピーが増加したのでした。
重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでも、高知県土佐清水市にある私の病院に入院すると、たちまち快方に向かいます。
病院での治療もさることながら、当地が大気汚染とはまったく無縁の土地柄であることが治癒力を増しているのです。
また、薬品も細胞の内外で有害な活性酸素を産み出し、さまざまな難病、奇病、膠原病や一般の炎症疾患の原因となっています。
こうしてできた大量の活性酸素は、直接人体に発癌性物質、あるいは細胞障害性物質として作用するのですが、活性酸素は元来非常に強い作用力を持つ半面、作られるとすぐに消滅する性質をもっています。
そこで、この瞬時になくなってしまう活性酸素よりも作用力は強くないが、いつまでも体内に存在し、人体に様々な弊害を及ぼす過酸化脂質という変質した脂が注目されるのです。
活性酸素+脂質→過酸化脂質(不飽和脂肪酸)
この過酸化脂質は、前述のように酸素に脂質類、特に不飽和脂肪酸が反応してできる脂質で尿から排泄されず、表4に示しましたように、組織や臓器の表面や血管内壁、眼球レンズ内壁、皮膚などに付着、浸透し、徐々に組織や臓器の表面や血管壁をいためつけていく脂です。
このようにしてできた細胞障害性のある変質した脂が、アトピー重症化の大きな原因の一つになっています。
紫外線には殺菌効果があり、皆様が冬の衣類や布団を夏、日光にさらして乾かすことでもおわかりのように、日光紫外線が、カビやばい菌の繁殖を抑えている事実はよく知られていますが、実はこれは紫外線が照射された物体の表面でシングレット・オキシジェンという活性酸素が発生して、この活性酸素が殺菌作用を果たすという過程を経ているのです。
つい先ごろの朝日新聞(平成6年3月11日付け)に、「最近、カエルがめっきり減った。米国では、種によって絶滅した。蛙はSODの力がないのです、紫外線増強による活性酸素増加に対抗できず、数が激減しているのだ」という記事が掲載されてていましたが、活性酸素は、いわばジキルとハイドであり、「過ぎたるは及ばざる如し」という類のものなのです。
それでは、活性酸素の過剰発生を防ぐにはどうすればよいでしょうか。
答えは、地球に到達する紫外線の量を適度に保つことです。そして、神様がその手段として用意したのがオゾン層なのです。
オゾン層の重要な役割は、地球上に殺菌に必要な紫外線を通過させ、それ以外の紫外線を反射してしまうことです(図1)。
炭酸ガスやフロンガスによるオゾン層の破壊は現在マスコミでも大きな社会問題として取り上げられるようになってきましたが、政府や産業界には事の重大性に気づかない人が多いのか、その対策は全くのんびりしたものです。
このままオゾン層の破壊が続けば大量の紫外線を浴び、人々の健康は著しく損なわれ、やがて、地球上の生命は絶滅の危機にさらされます。
「地球人のやつらはオゾン層の役割を知らなかったのかな」21世紀のある日、人っ子ひとりいない地球を訪れたET(宇宙人)が寂しげにつぶやく-そんなSF的な事態を引き起こさないためにも、今、私たちは、一人ひとりが地球環境保全に向けて、できる限りの努力をしなくてはならないのです。
このような実例でもおわかりのように、地球上には紫外線照射量が異常に増加し、活性酸素が増産され、汚染度の悪化に平行して、顔、首などを中心とした露出部のアトピー性皮膚炎が増加、重症化しています。
また、前述あるいは後述する工場、自動車の排出するNOxももちろん活性酸素を大量に発生させ、これも同じく露出中心の重症アトピーを生み出す大きな原因となっています。
本来、活性酸素は生化学者の研究テーマの一つに過ぎませんでした。
細菌やヴィールスなどの異物が体内に侵入すると食細胞が動員されて、これらの異物を食べてしまいます。
ところが、異物が次々に侵入してくると食細胞は大忙しになります。
ちょうど一昔前に流行ったテレビゲームのパックマンのように、食細胞は順次異物を追いかけて食べるという動作を繰り返すのです。
このとき、いったん満腹なった食細胞が再び食欲旺盛になるためには先に食べた異物を溶かしてしまわなくてはなりません。
この役割を受け持つのが活性酸素です。
したがって、活性酸素自体は人間にとって不可欠の存在です。
活性酸素が生成されないと、CGDという恐ろしい病気の原因にもなります。
しかし、実は問題はこれから先にあります。
活性酸素がどこまでも善玉ならば、その研究も専門家だけに任せておけばよかったのですが、活性酸素にはあたかも先に述べましたようにジキルとハイドのような二面性があり、しかも、活性酸素が悪玉の役割を果たすように仕向けた犯人は他ならぬ文明社会そのものであることが最近の研究で明らかになったのです。
すなわち、「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺の通り、活性酸素が体内で増加し過ぎると、勢い余って自分の体の組織をも攻撃するに至るのですが、近年活性酸素の過剰をもたらせた正体は、薄くなったオゾン層を突き破る紫外線であり、無神経に乱用される放射線であり、病院で提供される医薬品であり、また最近増加しつづけている自動車による排気ガスは、製鉄工場でたかれる重油から発生するガスと共に大量の窒素化合物(NOx、No、No2、No3など)を含み、このNOxも体内で大量の活性酸素を発生させます。
その他、塩化化合物、トリハロメタン、PCB、メチル水銀、Mn3+化合物、Cd2+化合物などの工場廃液やヒドラジッド、クロラムフェニコールなどの医薬品も細胞の内外で有害な活性酸素を生み出します。
この活性酸素の過剰が原因で起こる病気は、癌や成人病をはじめ、私たちの病気の80-90パーセントに及んでいるとさえ言われています。
ここで、私たちは、「活性酸素」の問題を通して文明社会のあり方や私たちの生活スタイルそのものを真剣に考え直す必要があるのではないでしょうか。
そこで皆さんにぜひ覚えておいてもらいたい公式があります。
活性酸素 + 脂質 → 過酸化脂質
これはとても重要な公式です。
というのも“悪玉”活性酸素は非常に強力な代物ですが、作用時間は短く、作用部位も細胞の表面に限られています。
これに対して、過酸化脂質は、強さはそれほどでもありませんが、作用時間が長く、細胞の内部に浸透Sルする性質を持っています。
したがって、生体に実際害を及ぼすのは活性酸素そのものというよりは過酸化脂質の方であろうと考えられるのです。
「活性酸素」と[脂質]の組み合わせは、まさしく悪い意味での鬼に金棒です。
ここでいう「「脂質」とは、一般に油・脂肪などを指し、体の中のコレステロール、中性脂肪とか食品、化粧品の中に含まれているいわゆる“あぶら”類を指し、この悪玉過酸化脂質の原料となる脂質は、正確に申しますと、2重3重の結合をもった不飽和脂肪酸ということになります。